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国家と国民にとっての危機であって、この間の住宅バブルとサブプライムローン関連の証券化商品で十分に資産を膨らませた資本家にとっては、必ずしも危機ではないのです。
現在P財務長官とB・FRB議長の施策が後手に回っていることもあって、想定外の損失が膨らんでいますが、それでも世界経済が一気にグローバル化した1995年から増やした金融資産の額は約100兆ドル、日本円にして○円と実に莫大で、今回の損失を差し引いても有り余るほどなのです。
G前FRB議長に「100年に1度の危機だ」と言ってほしくなかったのは、彼が在任中、資本の側に立って行動してきたとしか思えないからです。
その発言は、自分はあたかも国家と国民の側に立っていると言っているように聞こえます。
G氏は、すでに2005年6月9日の議会証言で、アメリカの住宅価格について、「全国的なバブルは見られないが、地域によってはフロスの兆候がある」と言っていました。
フロス(○)を日本語に訳すと泡のことですが、ビールをグラスなどに入れたときに出るような細かい泡というニュアンスがあります。
それに対して、バブル(○)はシャボン玉のような泡というイメージなので、まもなくはじけてしまうという意味を含んでいます。
ところが、フロスであれば、アメリカのどこかで泡らしきものが出ているかもしれないが、バブルではないので安心してよい、というメッセージだとマーケットが受け止めてもおかしくありませんでした。
そのフロスをそのまま放置しているとどうなるか、彼にはわかっていたはずです。
もし、本当に国家と国民の側に立つなら、少なくともこの時点で住宅市場の過熱ぶりを抑える施策をとるべきでした。
そうすると当然、投資家をはじめ、すでにローンを組んで住宅を買った人たちなどからも、猛烈な批判を浴びることになったでしょう。
それでも、いまの状況はおかしいと辞表を叩きつけるぐらいのことをしていれば、先ほどのような発言をする資格があったかもしれません。
そういう意味で、サブプライムローン問題は、資本主義の成立以来、400年間続いた資本と国家と国民の三位一体の関係を崩したことが、もっとも大きな意義といえると思います。
先ほど、資本とは各時代の中心的産業と言いましたが、三位一体の関係が崩れたあとの資本というのは、「株主」ということになります。
サブプライムローン問題は意図されたものではなかったにしても、結果として、そうした歴史的な役割を担うことになったわけです。
では、資本がどのように暴走して、国家と国民との関係を崩すことになったのか。
それはサブプライムローン関連の証券化商品のつくられ方を見るとよくわかります。
今回の世界金融危機の根の深さも、そこに起因しています。
サブプライムローンは、しばしば「低所得者向けの高金利住宅ローン」であると説明されます。
プライムというのは、信用力があり、融資をしても返済する可能性が高い優良顧客(プライム層ともいいます)のことです。
これに対してサブプライムは、信用力が劣り、返済能力に疑問のある顧客のことをいいます。
アメリカはクレジットカードなどから消費者ローンまで、金融サービスが高度に発達した社会で、その返済履歴に延滞があるかなどの情報をもとに、消費者一人ひとりの信用度が数値化されています。
その数値が一定以下のグループが、サブプライムに分類されます。
したがって、サブプライムと判定される消費者は、必ずしも低所得層とは限りません。
高所得者であっても支払いをよく延滞している人は信用度が低くなり、サブプライムとして分類されることがあります。
信用度はそのほか、決まった収入があるかどうかはもちろん、不幸にして病気や事故で働けないなどの状態にないかなど、細かく調べられ数値化されて決められます。
アメリカではすでに1990年代半ばから、富裕層(あえていうなら、「スーパープライム層」と呼べるでしょう)が高級住宅を高額で購入していました。
アメリカの消費ブームの背景には必ず住宅ブームがあります。
統計で見ると、GDPに占める個人消費の割合が拡大するときは住宅の価格も上昇しており、住宅価格の上昇の度合いによって、消費ブームの大きさが決まるといえます。
○年の「強いドル」政策への転換の成果がさっそくその年から現れ始めて、世界からアメリカにお金が集まり、消費ブームが拡大していきます。
○年から○年にかけてアメリカは、低金利だったこともあり、高い成長が見込まれるIT産業に豊富な資金が流れ込んで、いわゆる「ITバブル」が起きています。
2000年3月を頂点にこのバブルは崩壊。
翌年9月11日には同時多発テロ事件が起こり、そのショックからアメリカへの外国資本の流入は、いったん横ばいになってしまいます。
この間もアメリカの住宅価格は上がり続けていました。
船年から続く富裕層中心の住宅ブームは、ラスベガス、マイアミといった地域の高級住宅地で住宅価格の高騰を引き起こし、○年9月にはラスベガスの住宅価格は○%(前年同月比)も値上がりしました。
○後の○年4〜6月期からは、外国資本が経常赤字額を大きく上回って流入し、それに合わせるように、○年からサブプライムローンが急増しました。
ちょうどこの時期に、ラスベガスやサンディエゴといった高級住宅のブームがピークに達してしまったため、市場を広げる意味で次にサブプライムにランクされる層に照準を定めて住宅ローンが組まれていったことを示しています。
○年初めからピークの○年6月にかけての約2年間で、主要3都市の住宅価格は4割上昇しました。
サブプライムローンが住宅価格を押し上げ、住宅バブルをさらに加速したことがわかります。
「地域によってはフロスの兆候がある」とのG前FRB議長の発言は○年6月のことですから、その言葉はむなしく響きます。
まるで目を閉じて山を登っているようなものです。
ここは9合目だと思っていても、そこで引き返してしまったら、本当に9合目だったかどうかがわかりません。
ひょっとしたら、引き返した時点は5合目だったかもしれないのです。
もしそうなら、残り半分の利益が得られなかったことになります。
したがって、前へ前へと進み、頂上に登り詰めてバブルに一瞬でもタッチし、下り始めるところまでいかないと、利潤が極大だったかどうかが確認できないわけです。
これと同じことが住宅バブルでも起きたのです。
最初に住宅ブームは高級住宅地で起きました。
高級地の住宅価格が○年代半ばから○年のピークにかけて3倍強も市場原理主義に基づいて「市場が決める値段が正しい」ということをつきつめていけば、本当に利潤極大化を実現するには、途中で引き返せない道を歩んでいくしかありません。
一瞬でもバブルの領域に入らないと、利潤が極大化したかどうかがわからないのです。
上昇すると、さすがに富裕層でもそうは買えなくなります。
そうなると、次には中産階級だ、さらに次は信用力の劣るサブプライム層だということになってきます。
金融市場で利潤を極大化しようと思えば、最後の一人まで需要を掘り起こしてしまわないと、その流れは止まりません。
信用度の低い人たちにも住宅を買ってもらい、なおかつそれがリスクにならないような仕掛けを考えればよいのです。
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